とりあえず熱が冷めないうちに、荒削りのままですが朗読劇のレポ
朗読劇「誰にも会いたくない」
(舞台には背もたれのないイスが一脚だけ)
(カシャカシャとカメラのシャッター音が響く)
(♪~ピアノの音楽)
(ライトアップ)
(イスに腰掛け、ノートを見るような格好からスタート)
フカミが死んだ。私用のスマホが鳴るのは珍しかった。迷って出た。21歳のころ一緒にバイトしていたオダジマだった。みんなの先頭に立つようなやつ。変わっていない。
「フカミが死んだんだって」
自分だけが知ってることを言いたいのか、いろんな人に連絡しているようだ。
自転車を停めて、ガードレールを超え写真を撮ろうとして落ちたらしい
目撃者もいて、”自分から落ちたようにも見えた”とのことだった
フカミは変わったヤツだった。飲んだ後は夏でも「メリークリスマス」、出会ってから何回か合っているのに「お会いできて光栄です」女の子と飲みにいくと、面白いことでも言うのかと思いきや、誰とも話さない。カラオケに行っても1曲も歌わない。しかし相手の話に相槌を打ち、カラオケの歌を聞き、つまならそうにはしていない。
毎回違う挨拶に「メリークリスマス」と返事するのが好きだった
フカミはオダジマの部屋に居候をしていたが、オダジマが女を連れ込むときはいつもうちにミルクティーを買って来た
♪(音楽)
ある日、甘い飲み物が好きじゃないから、ブラックコーヒーがいいと言ったのに、ミルクティーを買って来た
フカミ「飲んで~」
僕「甘い飲み物好きじゃないって言ったよね?」
フカミ「そうだよね」
僕「ブラックコーヒーって言ったよね?」
フカミ「だからミルクティー買って来た。飲んでよ~」
それが彼のユーモア。彼はショートスリーパーで、長い夜を僕に付き合わせようとDVDを持ってくる。映画を見ている間ずっとしゃべっている。
フカミ「こんなやつ友達になりたくないよね」
僕「あぁ」
フカミ「これ言われたくないよね」
僕「あぁ」
フカミ「人ってこんなことで変われる?」
僕「変われぬ!」
(ここで亮くんが立ち上がる)
スチールのスタジオでカメラマンの手伝いをする。カメラマンはピリピリしていることも多く、オダジマは機嫌を取るのが上手い。フカミは上手くできないし、時には自分の意見を言う。ある日カメラマンが怒鳴り追い出された。フカミに電話してみると
(後ろポケットから携帯を取り出し、耳に当て電話しながら、少し歩く)
僕「何してるの~?」
フカミ「別に~」
(効果音)
僕「ミルクティー飲んでるな」
フカミ「俺がミルクティー飲んでる?飲むと思う?あんな甘いだけのやつ」
フカミ「怒られた」
僕「怒らせたいのかと思った」
(ここのやりとり失念)
フカミ「なんで?世界は平和じゃないよ」
僕「それは知ってる。何でも聞いて~」
フカミ「ミッキーはなんの動物?」
僕「シャケ」(キメた感じの言い方)
フカミ「ユナイテッドステイツオブ」
僕「アメリカ」(いい発音)
フカミ「レオナルド」
僕「ディカプリオ」
フカミ「アンジェリーナ」
僕「ジョリー」(テンション上がったような言い方)
写真美術館へ行き、定食屋で鯖の味噌煮をたべ、映画を観て、商店街で写真を撮った。そこに張り紙があった「おまえをゆるさない」
(座る)
スチールスタジオでは、作品を溜めて営業をする。オダジマはモデル志望の女の写真を撮る。打ち上げと称してお持ち帰りをする。みんなで写真について言い合い、どこかで聞いたような批評をききながら、知ったかぶりに言い返せず負けた気がしていた。フカミはそんなこともしなかった。マウントもとらない。フカミが羨ましかった。自由に見えた。
オダジ「お前は何をやりたいんだ」
オダジマは女の目線があったので、格好つけていつもよりフカミに追求した。フカミも珍しくムキになった。
フカミ「僕も撮ろうと思っている」
(ライトが赤から緑になる)
みんな興味津々だった。撮りたい人がいると。それはスタジオの近くの薬局の薬剤師で地味な人だった。僕は応援したかった。オダジマが間をとりもちモデルになってくれた。しかし、僕はどこか違和感があった。いつもの撮影でいいのか?作品撮りをやtってることに酔っているような作品、あっち側でいいのか?僕は間違っていると思ってはいたけど手伝っていた。
雑踏の中にいる薬剤師にだけピンとを当てて撮りたいって、どこかで見たことがあるようなものが撮りたいのか?と思いつつ、フカミの彼女に対する思いの強さが伝わってきた。彼女は個性的ではない。和ませようと
僕「みんな見習いですから」
薬剤師の女「いつも同じ店の中にいるだけだから、夢のようです」(女性の声色)
感じのいい人だった。声もかわいいし(ここで笑いが起こる)
なんか変だ。みんなやる気がない。
(立ち上がる。ライトの範囲が小さくなり、うすい青になる)
フカミ「代わりに撮って」
代わりに撮ったほうがよかったのか、いや、やっぱり撮れない。フカミは震えていた。ここでうなずくのは抵抗があった。
僕「自分で撮った方がいい。」
わざと軽く言った。フカミは途方に暮れた顔で、すたじをに戻っていった。結局、オダジマが撮った。僕とフカミは手伝った。打ち上げで薬剤師の女はオダジマが持ち帰った。
(ライトが赤くなる)
フカミはうちに来た。ミルクティーはなかった。
フカミ「変なこと頼んじゃったね」
フカミは顔をしかめてから笑った。それがうちに来た最後の日だった。そしてスタジオを辞めた。風景カメラマンのアシスタントをやるのだと言う。オダジマが送別会を仕切りって、モデルも来たがフカミは話さなかった。
(暗転に白いスポットライト、勢いよく立ち上がる)
フカミ「メリークリスマス」
僕「メリークリスマス」
(赤のライトの範囲が広がる)
ダラダラ歩いているとフカミを思いだした。どうして撮れなかった?撮ってあげればよかった?いや、それはダメだ。もしかしたら僕と同じ理由で撮れなかったのかもしれない。
みんな元気だろうか?微笑ましいようなバカバカしく思い出せる。みんな行き先が決まっているようで負けているようだった。フカミは強い
(シャッター音、右手てピース)
当時の僕に言いたい。つまらないことを気にすることはない。オダジマは1年間フリーでカメラマンをやめて、父親の建設会社を継いだ。フカミはもういない。自動販売機の張り紙を思い出す
「おまえをゆるさない」
(本を置いて立ち上がる)
フカミは最後にどんな景色を見たんだろう。いつか1人で行ってみたいと思った。その時はミルクティーを2本。葬式には行かなかった。
(シャッター音)
僕「とぅー」(オーディションの時のやつ、そして微笑む)
「メリークリスマス」
(カシャとシャッター音、暗転)
-終-
メイキング映像
- エンドロール時、メイキング映像が無声音で流れる
- 打ち合わせの様子
- マツモトクラブさんとスタジオで話している
- マイクの前で収録の様子
- 動きながら練習している様子
- マツモトクラブさんに演出をつけられている様子
- 脚本:高田亮
- 演出:マツモトクラブ
マツモトクラブさん、亮くんの一言
素晴らしかった。それぞれ4公演に良さがあったが、最後のこれが僕は一番ぐっときた。素敵な舞台が今日で終わってしまうのはもったいないと思う。どこかでやればいいのに。
(マツモトクラブさんが話していると、亮くんがぬるっと着替えて再登場)
亮くん「高田さんの大ファンで、すごいい台本だったので、マツモトクラブさんのエッセンスが入ったらいいかと思って。お二人共時間がない中、本当にありがたかった」
亮くん「緊張した~くぅ~!最高です。もう何でもできる!!」
感想と考察
亮くんの「芝居×初挑戦×生」という贅沢な時間だった。
暗いステージにシルエットで亮くんが登壇しる気配がわかり、緊張が高まる。
京都の公演のレポで朗読劇があるとは知っていたが、内容のネタバレは見ないようにしていた。
カメラのシャッター音、音楽が流れ、その後ライトアップで亮くんの姿が浮かびあがる。ステージには簡素なイスと亮くんが手にしているノートのみ。ここでもう感動。亮くんの身体ひとつで表現される世界が始まったんだと。
聴きやすく耳馴染みがいい声で発せられた最初の一言は、なかなか重めなセリフだった。
フカミの人となりの説明と掛け合いの録音された声は、マツモトクラブさんのテイストが強く感じられ、マツモトクラブさんのコントが大好きな私はニヤニヤが止まらなかった。
個人的に好きだったところは
- 甘い飲み物が好きじゃないのに、あえてミルクティーを買ってくるくだり
- 映画を観ながらフカミが話しかけてきたときの相槌と”変われぬ”の”ぬ”の間
- フカミとの電話の掛け合い、答えるときの言い方やテンションが全部違って最高
- 女性の声色、そして自分でかわいい声と言うくだり
- シャッター音が鳴る中、振り向いてピースサインをした顔
- 最後「とぅー」って言った後の微笑み
- 印象的なセリフ「メリークリスマス」
- 印象的なアイテム「ミルクティー」
- 印象的なワード「おまえをゆるさない」
題名「誰にも会いたくない」
「誰にも会いたくない」のは”僕”なのかな?
今の”僕”がどんな仕事をしているのは語られなかったけど、
”あの頃”の”僕”は悶々としていたのは伝わってきた。
みんな元気だろうか?微笑ましいようなバカバカしく思い出せる。みんな行き先が決まっているようで負けているようだった。フカミは強い
当時の僕に言いたい。つまらないことを気にすることはない。オダジマは1年間フリーでカメラマンをやめて、父親の建設会社を継いだ。フカミはもういない。自動販売機の張り紙を思い出す「おまえをゆるさない」
フカミは最後にどんな景色を見たんだろう。いつか1人で行ってみたいと思った。その時はミルクティーを2本。葬式には行かなかった。
今の”僕”はなんとなく余裕を感じるので、自分がやりたいことができているのかなと感じた。だからこそ、あの21歳の頃をバカバカしく、”みんな負けていた”と懐かしむことができたんじゃないかなと。バイト仲間で先頭だっていたオダジマでさえ、一年でカメラの道を離れたというところに虚しさを感じる。記憶には強烈に残っているけど、戻りたくない時期がある。決して悪い思い出ではないが、あの頃の自分には戻りたくない。その時代の知り合いには会いたくない、だから葬式にも参列せず「誰にも会いたくない」だったのかな。
フカミ
”僕”からみたフカミは”自由で強くてセンスのある男”だったように思える。
オダジマを筆頭にバイト仲間のの要領が良く、上辺をなぞったような生き方に対して、劣等感を感じつつ、冷めた感情を持っていた”僕”。フカミのその辺のくだらない連中とは一線を画した自由で強い生き方を羨ましがっていた。
僕はどこか違和感があった。いつもの撮影でいいのか?作品撮りをやってることに酔っているような作品、あっち側でいいのか?僕は間違っていると思ってはいたけど手伝っていた。雑踏の中にいる薬剤師にだけピントを当てて撮りたいって、どこかで見たことがあるようなものが撮りたいのか?
どうして撮れなかった?撮ってあげればよかった?いや、それはダメだ。もしかしたら僕と同じ理由で撮れなかったのかもしれない。
”僕”はフカミを買いかぶりすぎていたんじゃないのかな。普通の人とは違うというスタンスを取っていたように見えていただけなんじゃないかと。センスがあるように思われていたがために、いざ作品を撮るとなったら怖くなってしまった。オダジマ達の作品をくだらなく思うが、じゃあ自分に何が撮れる?って。
「おまえをゆるさない」
”自分で自分をゆるさない”っていうことかな~。全然しっくりはきてないけど。でも、そんな生き方をしていていいのか?っていう自問自答のメッセージだと思うんだよな~。今の”僕”はその自戒を胸に生きているような気がする。
みなさんはどのように解釈されましたか?
高田さんと亮くん
高田さんと亮くんは「SPUR」の雑誌で対談しています。
亮くんが高田さんの作品で好きなところは
誰もがもっているような人間のかっこ悪い部分とか、恥ずかしい部分をとても魅力的に描かれる方だなって。(引用元:SPUR.JP)
高田さんが亮くんの「リバーズ・エッジ」の演技を観た感想
吉沢さん自身は、きっとモテただろうし、人生うまくいってそうなんだけど、コンプレックスを抱えた人間の生身感がすごく出ていて。とてもいいなと思いました。(引用元:SPUR.JP)